研究概要

地殻システム研究分野

研究紹介ポスター 地熱グループ  CO2グループ

地殻は多数の天然き裂を含む複雑系である.また, 環境に調和したエネルギー・物質循環の場として有用な空間でもある.クリーンなエネルギー生成システムの創成を目指した, 人工的な水のクローズドループシステムを地下き裂を制御することにより創成する能動的地殻エネルギー抽出法の設計法の開発に関する研究, さらに温暖化ガスであるCO2の地下貯留法の開発や高レベル放射性廃棄物の地下保管法の長期信頼性に関する検討を行い, インナースペースをエネルギー・物質循環の場として利用するための研究を推進している.

不均質岩体中における物質移動挙動のモデル化

地下岩体中の物質移動の把握は地殻システムを設計するうえで,極めて重要である.一般に,地下岩体は天然き裂等の不均質性を有する複雑系媒体であ り,多くの場合において,フィック則等の従来型モデルでは地殻内物質移動を適切に表現できないことが知られている.当研究チームでは,非整数階微分を用い た数学モデル等を活用して,複雑媒体中における物質移動モデルの開発を実施している.フィールドのトレーサ応答解析に基づき,不均質岩体における物質移動 のグローバルな特性を把握するための方法論構築を目指している.

クリーン地殻エネルギー抽出のためのき裂型貯留層システムの設計

地殻深部からの熱抽出を設計 するための学術的基礎の構築を目的として,人工的に作成した熱交換面を利用する次世代型地熱エネルギー開発ならびに既存地熱貯留層の性能向上に関する研究 を行っている.地質情報から推定した天然き裂分布の複雑系モデルに基づく水圧破砕解析法,貯留層内の流体・熱移動解析法を連成させた長期抽熱性能予測シ ミュレーションコード(FRAC-SIM)を開発し,水圧破砕により誘起される貯留層の形状・規模,抽熱性能の経時変化を予測することを可能にしている. また,既存地熱貯留層の直下に拡がる水の臨界点を超える超高温岩体からの抽熱を目的とした先導的研究を行っている.

CO2地下貯留のための岩石/水/ CO2相互作用と信頼性評価

CO2地下貯留のポテンシャルならびに信頼性を評価することを目的として,岩石/水/CO2系における短期および長期の物理・化学的相互作用に関する実験的研究を推進している.吸脱着等温線図を測定することにより,CO2の岩石への吸着現象が地下貯留に大きな影響を及ぼす可能性のあることをはじめて見出している.また,CO2貯留層の進展特性ならびに岩体の力学的・化学的安定性を評価するために,CO2地下注入の数値解析を行っている.地殻システムの工学による,CO2循環技術の構築を目指す.

 

エネルギー循環システム研究分野

研究紹介ポスター 電池グループ  CNT複合材料グループ

本分野においては,将来のエネルギーシステムの中核となることが期待される水素エネルギーシステムに着目したプロジェクト研究を推進する.水素は材料と特異な相互作用を行い,いわゆる水素脆性や水素誘起割れなどの未だ解明されていない材料強度学的課題がある.水素エネルギーシステムの信頼性・耐久性を確保するための材料強度学的研究,ならびに将来のエネルギーシステムを担う新規材料創成のための研究を推進する.

固体酸化物形燃料電池(SOFC),全固体リチウムイオン電池の信頼性評価に関する研究

水素を利用した次世代発電技術である固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実用化のためには,信頼性ならびに耐久性の確保が最も重要かつ緊急の課題と なっている.本研究チームでは, SOFCの性能に加えて信頼性・耐久性に及ぼす材料・機械・電気・化学的因子間の相互作用(MECh Interactions)の影響に関する検討を系統的に行い,標準特性評価試験法や耐久限界評価試験法の確立ならび劣化メカニズム解明に基づく長期信頼性の確保に向けた研究を推進している.模擬環境下における特性実験と,有限要素法や分子動力学法等を用いた数値シミュレーションによる解析とを連成したア プローチを展開している.加えて,SOFC構成材料の作製法の開発,特に電解質薄膜化法に関する検討を行い,作動温度の低減を目的とした研究を推進してい る.最近では,全固体型リチウムイオン電池にも注目し,充放電時の損傷・劣化挙動の見える化技術の構築を行うことで耐久性・信頼性の確保に向けた研究を推進している.

カーボンナノチューブを用いた新規エネルギー材料の創成

カーボンナノチューブ(CNT)の有する特異な材料特性を活用することにより,持続可能社会の実現を目的とした,新規エネルギー材料創成技術の開発に関する研究を行っている.具体的には、CNTを強化素材として用いることにより,アルミナやジルコニア等のセラミックスやエポキシ等のポリマーをマトリックスとする機能性複合材料の合成・評価に関する研究を重点的に行っている.CNTの配向性・分散性の制御法,CNTとマトリックスとの界面特性制御法ならびにCNT単体の強度,熱膨張特性に関する検討を行い,特に,強度,摩擦・磨耗などの機械的特性,電気伝導ならびに熱膨張特性を活用したエネルギー変換材料(アクチュエータ)に関する系統的特性評価を推進している.

CNT単体の引張試験